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大阪高等裁判所 昭和59年(ネ)342号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

債権に関する仲裁契約はその債権の譲受人に対しては拘束力を有しないとする裁判例として、大阪区判大正6.4.30(新聞一二六八号二三頁)、拘束力を有するとする裁判例として、東京地判大正7.10.19(評論七民訴三九頁)、東京地判昭和42.10.20(下民集一八券一〇号一〇三三頁)がある。

【判旨】

一1 まず控訴人主張の仲裁判断の効力について考察する。

一件記録によれば、控訴人と「やさき金属」を契約当事者と表示した昭和五八年三月一日付仲裁契約書と題する書面並びに申立人を控訴人と、相手方を「やさき金属」外五名と、仲裁人を萩原宇多子と各表示した同年七月二九日付仲裁判断書と題する書面(以下、本件仲裁判断書という)がそれぞれ存在すること(ただし右各書面の成立に関する疎明はない)、本件仲裁判断書には、本件手形の振出交付行為の無効と控訴人の但馬信用金庫に対する右手形金の支払義務の不存在を確認する旨の各記載があり、かつその正本が昭和五八年八月五日から同年九月一〇日までの間に、控訴人、「やさき金属」破産管財人、但馬信用金庫外四名に、それぞれ送達された事実を一応認めることができる。

2 ところで、本件仲裁判断書により控訴人主張の仲裁判断がなされたものとしても、本件では控訴人と「やさき金属」を契約当事者と表示した前記仲裁契約書があるだけで、控訴人と被控訴人もしくは但馬信用金庫を当事者とする仲裁契約が締結された事実を疎明する資料は全くないから、右仲裁判断は、被控訴人に対しても、但馬信用金庫に対しても、何らの効力を有するものではない。

3 仮に、控訴人主張の如く、本件手形が「やさき金属」を隠れた受取人として同会社宛に振出され、主張のように転々流通して被控訴人が所持するに至つたものであり、控訴人と「やさき金属」との間に仲裁契約が存在し、これに基き控訴人主張の仲裁判断がなされたとしても、手形上の権利に関する振出人、隠れた受取人間の仲裁契約とそれに基く仲裁判断は、有価証券としての手形の特質である文言証券性、並びに公信力に鑑み契約当事者(及びその包括承継人)間に効力を有するに止まり、その後にその存在を知らずに手形を取得し又はこれを受戻して従前の地位を回復した第三者(裏書人)を拘束する効力はなく、単なる人的抗弁事由となるに過ぎないものと解すべきところ、弁論の全趣旨によれば本件手形の受取人兼第一裏書人であって満期呈示後にこれを受戻した所持人であると認められる被控訴人につき、右抗弁事由に関する疎明はなく、かつ被控訴人は民事訴訟法二〇一条一項の承継人にも該らないから、控訴人の仲裁判断の存在を理由とする抗弁は、すべて失当である。

(藤野岩雄 仲江利政 蒲原範明)

<参考・原審事実欄「債務者の主張」>

三 債務者の主張

1 債務者は有限会社やさき金属製作所(以下、「やさき金属」という)に対し、本件手形を受取人及び振出日を白地にして、且つ振出日についての補充権を授与しないとの特約のもとに振出し、その後も債務者において振出日を補充した事実はないから、本件手形は不完全な手形にすぎず、債務者にその支払義務はない。

2 本件手形は、「やさき金属」から有限会社ユタカ商会(以下、「ユタカ商会」という)を経て債権者が取得し、債権者において受取人を債権者とする補充をした後、但馬信用金庫で手形割引を受けたが、その後に買戻して大阪東都株式会社(以下、「大阪東都」という)に裏書譲渡した。「大阪東都」は本件手形を支払期日の昭和五八年八月一〇日支払場所に呈示したが支払を拒絶されたため、債権者が「大阪東都」より期限後裏書の方法によつて買戻した。したがつて、債務者は、手形法二〇条一項により、「大阪東都」に対する抗弁理由をもつて債権者に対抗しうる。

しかるところ、債務者と「やさき金属」との間には、昭和五八年三月一日付で締結された仲裁契約が存在し、右仲裁契約(以下、本件仲裁契約という)上の「やさき金属」の地位は本件手形の前記譲渡によりこれに随伴して「大阪東都」に承継されたのであるが、本件仲裁契約によると、「債務者と「やさき金属」間において現在ならびに将来発生することのある手形貸付を債務者が「やさに金属」にしたことその他に関する民事上の紛争のうち法令上許容されないものを除くすべてに関しては、その解決善処を仲裁手続によつてのみせられるもの」とされているところ、本件仲裁契約による仲裁人萩原宇多子は、同年七月二九日、本件手形に基づく手形金支払義務の不存在を確認する旨の仲裁判断をし、その仲裁判断書の正本は、債務者、但馬信用金庫及び「大阪東都」に送達されたうえ、同年一〇月六日管轄裁判所たる大阪簡易裁判所に寄託されたので、債務者と但馬信用金庫及び「大阪東都」間においては、本件手形に基づく手形金支払義務が存在しないことが既判力をもつて確定された。

したがつて、本件手形をその後に「大阪東都」から期限後裏書の方法によつて取得した債権者は、もはや本件手形に基づく手形金請求権を有しない。

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